キリン、協和発酵買収交渉、医薬再編の動き加速、抗体医薬、統合効果大きく
キリンホールディングスが協和発酵を買収する交渉に入ったのは、両社の強みを持ち寄って世界に通用する新薬を生み出す体制を整えるのが狙い。医薬メーカーは国内市場の鈍化と新薬不足という二つの壁に直面している。両社はそれぞれ「抗体医薬」と呼ぶ革新的な薬を開発する技術を持っており、統合効果は大きいとみられる。買収が実現すれば、世界での生き残りをかけた医薬再編が加速するのは確実だ。(1面参照)
国内では二〇〇五年に合併・統合により、アステラス製薬、第一三共、大日本住友製薬などが相次ぎ誕生した。今年十月一日にも田辺製薬と三菱ウェルファーマが合併して田辺三菱製薬が発足した。
世界の製薬市場で生き残るには、年間三十億ドル(三千四百五十億円)以上の売上高が必要といわれている。新薬を継続して生み出すためには、一定水準の研究開発費が必要だからだ。
ただ国内は三十三兆円にのぼる医療費の抑制に向け、医療費の二割を占める薬剤費の圧縮に動いている。政府は薬価の安い後発薬を二〇一二年までにシェア三割に普及させる目標を掲げる中、日本の医薬品市場の成長は頭打ち。実際、世界市場における日本の地域別売上高は二〇〇五年に一一・三%と、十年前の約半分に低下している。
国内の製薬企業が成長していくには、欧米など海外市場に打って出なければならない。研究開発強化に加え、海外進出の資金力が必要。このため、各社がM&A(買収・合併)による規模拡大を急いでいる。
ただ、キリンと協和発酵の医薬品事業の年間売上高を合わせても二千億円に満たない。買収が成立した場合、両社は事業基盤の強化に向け、まず技術のシナジー効果を狙うとみられる。
両社が強い抗体医薬は生物の免疫反応を応用した医薬品。がんなど病原を狙い撃ちするので、既存の薬に比べて副作用が少なく、効き目が強いとされる。
キリンは抗体医薬を効率よく作製する技術を持ち、特に副作用を起こしにくくする「ヒト化」と呼ぶ技術などで注目されている。協和発酵は抗体医薬の効き目を最大一千倍に高める技術を保有。二社の技術を組み合わせ、キリンの安定した事業基盤のもとで腰を据えて研究開発を進めれば、有力な新薬開発につながる可能性もある。
▼抗体医薬 免疫機能を担う「抗体」と呼ぶ特殊なたんぱく質を使った医薬品。一般的な薬は化学合成で作るのに対し、抗体医薬は培養細胞で作る。病気の引き金や悪化のカギを握る物質に結合して作用を妨げる。がんや関節リウマチの治療薬として急速に普及しており、世界市場規模は年二兆円弱に達する。武田薬品工業や第一三共、アステラス製薬も製品や関連技術導入を急いでいる。
(10/19日経新聞)
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