ソフトバンク(9984.T: 株価, ニュース, レポート)が11日、米アップル(AAPL.O: 株価, 企業情報, レポート)の携帯電話端末「iPhone(アイフォーン)3G」の国内販売を開始した。先行販売の舞台となった「ソフトバンク表参道」では、早朝から1500人以上が1キロ超の行列を作り、好調な滑り出し。
他社ユーザーの獲得に期待がかかると同時に、同社の割賦販売導入から2年が経過する今年秋以降は、既存ユーザー引き止めの役割も担う。同社の業績に貢献するかどうかは、人気の持続力にかかっていそうだ。
<不明要素が多くても集まる期待>
アイフォーン発売がソフトバンクの業績に与えるインパクトについて、プラス面を評価する声が市場関係者の中では多い。
孫正義社長はアイフォーンの発売イベント後、記者団に対し「収益面でもプラス」と強調。リーマン・ブラザーズ証券の津坂徹郎アナリストは「ソフトバンクにとってマイナスにはなりえない」と指摘する。
アイフォーンの収益性に業界関係者の関心が集まるのは理由がある。端末価格が低く設定されていることに加え、アップルとの利益分配の割合が不明なためだ。
アイフォーンの本来の価格は6万円強(記憶容量の小さい8ギガバイトの場合)とされる。これを「特別割引」を通じて、利用者の実質負担額を約2万3000円に軽減している。
他方、利用者は、基本料金や定額のデータ通信料金を含め計7280円を毎月支払わなければならず、同社の低料金プラン「ホワイトプラン」の980円に比べ高く設定されている。端末に対する「特別割引」分を、利用料の一部で回収する仕組みとされ「ソフトバンクの取りこぼしはない」(津坂アナリスト)とみられている。
従来は通信会社が販売奨励金を負担して端末価格を低く抑え、利用者の通信料で回収するビジネスモデルが主流だったが、価格体系が不明瞭として最近では各社とも縮小の方向を打ち出していた。しかし、アイフォーンでは、この従来型モデルに歩み寄り、端末のお値打ち感と収益性の両立を図ろうとしているようだ。
アップルとの利益分配割合は、ソフトバンクと並んで獲得に名乗りを挙げていたドコモへの導入が見送られたことから、足元ではアップル側に有利な条件とみられている。ただ、複数の証券アナリストは、日本でのアイフォーン販売が拡大すれば力関係が変わり、有利な条件を引き出せるのではないかとみる。
これまでソフトバンクの利用者拡大を支えてきたのは低料金指向のユーザー層だった。孫社長は、アイフォーンを通じて、NTTドコモ(9437.T: 株価, ニュース, レポート)やKDDI(au)(9433.T: 株価, ニュース, レポート)からソフトバンクへと、通信会社を変更する「高額ユーザー」(孫社長)が見込めるとも話す。いちよし投資顧問の秋野充成・運用部長は「当初は話題先行で台数が出るだろう」とし、他社からソフトバンクへの相当数のユーザー取り込みが進む可能性があると予想している。
<「攻め」だけでなく「守り」の役目も>
ソフトバンクは今秋以降、経営面で新たな局面を迎える。他社に先駆けて導入した携帯電話端末の割賦販売を始めてから2年間が経過するためだ。割賦による支払い期間を2年としている利用者が多く、返済期間中はドコモやKDDIへの利用者の流出が抑えられ、ソフトバンクが新規ユーザーの開拓に注力できた。しかし、秋から割賦期間終了のユーザーが出始めるため、他社への流出が促される可能性がある。アイフォーンは、ユーザーを奪う「攻め」だけでなく、ユーザー引き止めの「守り」でも重要な役割を担うことになる。ただ、アイフォーン人気を受けて競合端末も出始めており、先行きは楽観視できない。
割賦販売の2年経過による影響について、いちよし投資顧問の秋野氏は「年内はないだろう」と話す。しかし、アイフォーンが市場の期待と同程度にとどまったり期待を外れたりした場合「ネガティブな影響が出てくる可能性がある」と見ている。
得意の低価格戦略はドコモやKDDIが追随して「新味が薄れた」(調査会社アナリスト)と指摘されるが、アイフォーン人気が継続していれば、端末の機能を重視するユーザーに対する引き止め役にもなる。
欧米で発売された昨年は、タッチパネルなどアイフォーンの目新しさが注目された。しかし、同様の機能を備えた端末をシャープ(6753.T: 株価, ニュース, レポート)などが投入。他社も同様の機種開発を急ぎ、目新しさが薄れつつある。日本メーカーの端末開発関係者は「ワンセグやおサイフケータイなど、日本の文化に根ざした商品力で対抗できる」と、追い上げに自信を見せている。
アイフォーンが日本で市場の期待通りの効果を生むかどうか。アップルとの力関係に変化は見られるのか。秋野氏は「年末までには、ある程度の方向性が見えてくるだろう」と指摘。今後数カ月は、番号継続制(MNP)を利用した契約者の転入出数の動向も、株価の材料として注目を集めると見ている。
(07/11ロイター)